【しゅうたの畑×蝶結び 対談2】「誰かに喜んでもらいたい」が原動力。ギフトへの強い思い入れとは

【しゅうたの畑×蝶結び 対談2】「誰かに喜んでもらいたい」が原動力。ギフトへの強い思い入れとは

福岡県うきは市で「しゅうたの畑」プレゼント農家として活動する青木秀太さん(以下、しゅうたさん)と、蝶結び店主杉下との対談記事後編です。

>>前編はこちら

前編は、しゅうたさんがキックボクサーから介護職を経て農家になるまでの背景についてお聞きしました。後編では、フルーツをギフトとして取り扱っているふたりが、毎日どんなふうにギフトと向き合っているのか、そのこだわりや想いについて語り合います。

直接販売する。そのほうが自分の想いが伝わるから

杉下:壮絶な半生を経て、農家になったしゅうたさん。次は、つくったフルーツや野菜を誰に届けるか、これをまずどう考えたんですか? JA(農業協同組合)に出すのも、選択肢のひとつやったと思うんですけど。

しゅうた:直接売ったほうが自分の想いって伝わりやすいと思うんです。杉下さんもサイトで注文を受けて、直接お客さんに届けているわけで。フルーツをJAに出荷すると「誰がつくったかわからないフルーツ」になって、食べる人の元にお届けすることになるから。それは自分のやりたいこととはちょっと違うなと感じました。

杉下:JAに出荷すると、しゅうたさんという個性が「生産者番号」になってその他の農家さんたちと埋もれてしまいますよね。「しゅうたの畑の梨」の価値が、「福岡県産の梨」にしかならず本来の価値が伝わらない。どんなところで、どんな人が作ったか。これが消えてしまうんですよね。

しゅうた:もちろん、JA出荷の果物や野菜は、みんなに“食料”を届ける上で必ず必要な部分ではあるんです。ただ「自分にとってどちらのスタイルが合っているのか?」を考えたとき、直接お客さんと顔の見えるコミュニケーションをとれるほうが、自分には合ってるんだろうな、今後もこのスタイルで続けていけるだろうな。そう思って、今のスタイルになりました。

想いが主役、フルーツは準主役

しゅうたさんのフルーツギフトは、お取り寄せや自分へのご褒美として利用される方が多いのだとか。自身がフルーツに対して感じている想いの部分をよりギフトにこめたいため、段ボールなどの資材や、同梱物のリーフレットにも「しゅうた色」を存分に表現しています。

杉下:僕は何回かしゅうたさんのフルーツギフトを購入させてもらったんですが、段ボールがとても凝っていて本当にびっくりしました。産地直送で、資材にも同梱物にも、これほど人柄が全面に出ているのを初めて見ました。


しゅうた:ありがとうございます。僕の想いが出過ぎている問題は、自分自身も感じていて(笑)。合う人と合わない人に、分かれてしまうんです。どうしようかなと、今ちょっと迷っています。

杉下:そうなんですね(笑)。でも実際のギフトを見ると、手間暇かけて詰めてくれたんやろうなとか、例えば配送伝票の貼り方ひとつにしても、性格とか真面目さが感じられて、ギフト一つひとつに真摯に向き合っているのが伝わってくるんです。これは、僕宛のギフトだからというわけじゃなくて、普段から誰にでも丁寧に梱包している風景が感じられて。すみずみまで、性格と人柄が伝わってきますよね。

しゅうた:うれしいです。ギフトは、オーダーくださった方のお顔を思い浮かべながら、一つひとつ詰めてます。「しゅうたの畑」について説明したリーフレットについては、想いを伝える部分は魂をこめて文章にしています。理念というかビジョンを全部お伝えし、あとはデザイナーさんが上手にカタチにしてくださっています。

杉下:しゅうたさんは「プレゼント農家」。自分のつくったフルーツで、誰かに喜んでもらいたい想いが強いですよね。その設計をするにあたって、参考にしたショップとかあるんですか?

しゅうた:まずはいろいろなサイトを見てみようと、「フルーツギフト」「贈り物」で、とにかく検索したんです。トップに表示されたのが「蝶結び」でした。サイトを見ると、ショップの想いがビンビン伝わってくるわけですよ。蝶結びのギフトの作り方、届け方に、僕と似た部分を感じたんです。

“フルーツ”そのものではなく、贈り手から大切な誰かへの“想いの部分”までをきちんと届けるお手伝いをするショップだなと感じました。自分もそう在りたいと思ってたから、出会えたことがうれしかったですね。

僕自身も「自分へのプレゼント」「家族へのギフト」のように、「ありがとう」の想いを届けている感覚で日々取り組んでいます。

極論フルーツでなくてもいい。お相手が喜ぶものであれば

ご自身がめざす志と同じものを、蝶結びに感じたしゅうたさん。蝶結びギフトの裏側にも興味津々です。

杉下:贈り手の「想いを伝える」部分は、蝶結びがいちばん大切にしているところ。だから、アルバイトの方には同梱物の順番の重要性をしっかりと説明します。まずはギフトを受け取った方にいちばん先に見てほしいから、メッセージカードがいちばん上、その次にフルーツの説明、いちばん下にショップカード、の順番を絶対に守ってください、と。

例えばマスクメロンだと、大方のショップではメロンの説明がはじめに見えるように入っています。僕たちのサービスはそうではなくて、「出産おめでとう、体の具合はどう?疲れやすくなってない?メロンでも食べてリラックスしてね」、この想いの部分を先に受け取り手の方に見えるようにしたい、メロンは準主役でいいんです。

しゅうた:(杉下が話している間、ずっとうなずきながら)本当にそうですよねー。いちばん大事にしたいところ。

杉下:だからフルーツを買いたい人は、産直やスーパー、百貨店、ふるさと納税で買ってもらったらいい。僕らが間に入る意味は、誰かと誰かをつなぐお手伝い。そこに対価をいただいているので。そういう意味では、極論フルーツじゃなくてもいいんです

しゅうた:そうそう、僕もそうなんですよ。畑をさわるのは好きなんだけど、ギフトにするのは正直なところフルーツでなくてもいいと思ってます。

杉下:僕がめざすのは、贈る人、受け取った人双方に喜んでもらえるような空間づくりの演出。だから贈り手の方の元に届く受け取った方からのお礼LINEも「体調を気遣ってくれてありがとう。送ってくれた梨、とってもおいしかったよ」の順番。あくまでそこのお手伝いをしたいですね。

しゅうた:杉下さんのその想いは、百貨店で働いてたときと会社を立ち上げたときとで、違うんですか?

杉下:百貨店勤務の前の話になるんですけど。実は僕、もともと東京で舞台音響の仕事をしていました。ミュージカルの舞台やライブハウスで、音響を担当していたんです。ライブハウスで音を出すときにいちばん意識するのは、ライブハウスだと、どのタイミングでお客さんの気持ちを盛り上げるのかとか、ミュージカルだとどうやって音で感情を揺さぶるのか、クライマックスに向けて音でどんなふうに演出できるのかということ。

音を出すというより、音で空間をつくるイメージです。正直、自己満足な部分もあるんですけど、いかに観客の心を動かすか、こればかり考えていました。その後いろいろあって音響の仕事を辞めて京都にUターン。縁があってフルーツギフト専門店で働くことになりました。そのときは、フルーツを売っていましたね。想いを伝えることに重きを置いていませんでした。

コロナをきっかけに店舗が閉鎖、起業して蝶結びをスタート。まず何をはじめればいいかと考えたときに、「お祝いを伝えつつ、産後のおかあさんをねぎらいたい」といった気持ちを伝える、出産祝い特化のフルーツギフトを打ち出しました。

オンライン全盛期だからこそ、チャットで心の通うコミュニケーションを

杉下:雇われてやっているのと、自分の事業を進めるのとでは、全然意識が違いました。蝶結びをはじめて、自分ごととして真剣にフルーツギフトのことをより深く考えるようになりました。

例えば、ジュースのご注文で用途が結婚式のプチギフトだと知れば「一つひとつラッピングしましょうか」など、積極的に“受け取る人が喜んでもらう”ための提案をしています。

しゅうた:このオンライン全盛期の時代に、チャットやLINEで一人ひとりとやりとりしていることに驚きを隠せません。はじめは「チャットbotだろう」って思ったんです(笑)。まさか代表の人が一人だけでやってるわけないよなって。あと蝶結びの「季節のフルーツセット」のカスタマイズサービス。その要望に応えるのもすごいんです。この効率化時代にとことんアナログなやりとりが重要視されてるんですよね。

杉下:他がやっていないし、喜んでもらうために必要だから。チャットでの質問も「何でもお問合わせください」だけでは一方的なんです。「フルーツは生鮮品だから、受け取ってもらえなかったどうしようって不安に感じてないですか?」「苦手なフルーツがあって、取り除けないのでは?と思ってませんか?」など、よりくわしくこちらから声掛けすると、お客さんの悩みに直接届くようなんですね。蝶結びからの質問をきっかけにお客さんははじめて返信してくれます。

僕はオーダーメイドギフトのご依頼が増えてほしいと思っているので、問い合わせを増やしたいんです。ギフトでは、お客様とのコミュニケーションを何よりも大切にしたいんですよね。

人生の節目に寄り添える喜び

蝶結びのギフト、しゅうたの畑のギフト。同じフルーツギフトですが、全然違います。それぞれの特徴や個性があります。

杉下:うちのギフトは、誰かに贈るプレゼントやギフトが95%ですね。看板が、フルーツギフト専門店だから。だからこそ、お客様の人生に寄り添えているなと実感します。例えば、結婚内祝いで注文してくれた人が、次に出産内祝いで使ってくださるのを見て、「あ、お子さん生まれはったんや!」と。そして、内祝いをもらった方が、おいしかったから出産祝いに送ってみようと利用しました、とメッセージをくれて。不幸があったときにも「お供えとして包めますか?」と問い合わせをもらいますよ。TPOに沿った包み紙でお送りしますね。一つひとつのギフトにストーリーがあって、僕自身もぐっときますね。

しゅうた:人生に寄り添ってるなあ。それは蝶結びに信頼があるからこそ続く関係性ですよね。

便利な世の中なのにみんな忙しくてがんばっている。だから自分へのご褒美があっていい

杉下:しゅうたさんのギフトは、お取り寄せが多いんですか?

しゅうた:うちは、自分へのご褒美としてのフルーツギフトを発信しているので、どちらかというと自分へのプレゼントとしての利用が多いです。最近思うのが、令和に生きるみなさん、本当にがんばっているじゃないですか。今はどんどん便利になっているのに、忙しくなってるんです。不思議ですよね? だから自分へのご褒美ってあってもいいと思ったんです。そういう意味でお取り寄せも使ってほしいですね。

僕がよく使う言葉が「ほっこり笑顔」なんですけどね、がんばった1日の中でほっこりして笑顔になる、そんな一瞬があってほしい。自分のつくったフルーツや野菜でそう感じてもらえたらうれしいなって思ってるんです。

杉下;いいですね。フルーツっていわゆる贅沢品じゃないですか。ごはんが終わってフルーツが出てくると「わ!デザートや!」っていう喜びがある。特別なひとときをとことん楽しんでほしいですよね。

お客様レビューが、最高のギフトに

オンライン全盛期に、裏では一見面倒と思えることを最優先して大事にしているとお互いにわかったしゅうたさんと杉下。お客様からいただくレビューが心からうれしいと語ります。

しゅうた:買ってくれたお客様が、プラットフォームに評価とコメントを寄せてくれるんですね。それがうれしくてうれしくて。いちばん本気でお客様と向き合って文章でコミュニケーションをとっています。やりとりできるのが本当に幸せです。

杉下:うちのお客様は贈り手の方が多いんですね。自分の手元には何も残っていないのに、時間を割いてわざわざレビューを書きにきてくださるんです。ありがたいことですよね。オンラインになっていい面と悪い面両方あると思うんですけど、でもこれだけのレビューを文章でもらえるというのは、実店舗をやっているときには考えられなかったことですね。オンラインだからこそもらえるギフトだなって思っています。

「誰かに喜んでもらいたい」を信条とするしゅうたさんと杉下。自然と共鳴しあい、終始ニコニコしながら話もまたふくらんでいきました。今後気の合うふたりがコラボして作るフルーツギフトができるかも!?

これからの「しゅうたの畑」と「蝶結び」に、ぜひご期待ください。